逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「さ、や……よかった……会えた……」


 基はホッとしたように、微笑みを浮かべる。

 だが沙耶はなぜ基が笑うのかわからなかった。


「どうして傘もささずにそんなところ立ってるの。何かの修行なの……?」


 そうやって、冗談でも言わなければ、泣いてしまいそうだった。

 けれど基は至極真面目に答える。


「……傘、買いに行って、すれ違ったら、困るだろ……」


 そして雨が目に入るのか、ゴシゴシとスーツの袖口で額をぬぐう。

 いくら拭いても土砂降りの雨でまったく意味がないのだが、沙耶はそれ以上何も言うことができなかった。


 沙耶の部屋は三階建てのアパートの二階の角部屋である。

 振り返ればカーテンの隙間から、沙耶の部屋の明かりが見えた。

 まさかと思いたいが、明日の朝まで待っているつもりだったのだろうか。

 雨に打たれているのは自分ではないのに、クラクラとめまいがした。



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