逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「ちょっ、や、なに、あのっ……!」


 広い胸に抱きしめられて息が止まりそうになる。
 心臓がドキドキと音を立て、胸の中で暴れまわる。

 なんとか体を押し返そうとしたが、逃がさないと言わんばかりに基の腕に力がこもる。

 そして基の唇が、沙耶の耳元で熱に浮かされたかのように、ささやいた。


「沙耶、今、初めて俺の名前を呼んだな……」
「あ……」


 そう言われてみれば、確かに基の言う通りだった。


 沙耶は今まで一度だって基の名前を呼ばなかったのだ。

 心の中ですら、軽薄御曹司呼ばわりだったのである。


「嬉しくて気が変になりそうだ……沙耶、もう一回、呼んでくれ。俺の名前……」





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