逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
ゆっくりと腕の力が緩められる。背中に回っていた手が、肩に移動する。
肩を包み込む彼の暖かさは、嫌ではなかった。
顔を上げると、基と目があう。
名前を呼んで欲しいと、沙耶の言葉を待っている。
「……もとい」
だから呼んだ。
なんてことない。
ただ目の前の男の名前を呼んだだけ。
呼べば落ち着くかと思ったのに、沙耶の心臓は変わらず、早鐘のように打ち続ける。
息を吸っても、なんだか息苦しく、ドクンドクンと、鼓動がうるさい。
これはどうやったらおさまるんだろう。
どうしていいかわからない沙耶は、ただ基を見つめもう一度名前を呼んでみた。