逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「これは、夢なの……?」
あまりにも優しい時間に、そう言われればそんな気もしてくる。
沙耶の問いかけに、基は苦笑して首を振った。
「いや違う。現実だな……。つか、こんなに勇気を振り絞ってるのに、夢であってたまるかよ」
海風が沙耶の長い髪を揺らした。
その髪を基は指でかき分けながら、両手で沙耶の頰を包み込む。
「沙耶……君のことをもっと知りたい」
「知りたいって……?」
「名前以外のこと……。どんな風に生まれて、どんな風に育ったか。君のことを俺に教えて欲しい」
知りたい、教えて欲しいという基の言葉は、まっすぐな好意である。
だがその問いは、当然沙耶の胸に、追い詰められたような焦りを生む。
「基……私……」
なんと言ったらいいのだろう。
躊躇いと恐怖で、今、自分の胸に咲きつつある想いの蕾が、萎れそうになる。