逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 無駄な時間。
 その言葉が沙耶の胸をえぐる。

 かつて自分も、神尾にそう言って美鶴の名刺を返したから。

 だが同時に、社長の怒りは当然だと、冷静な部分が沙耶にささやくのだ。

 
 人は恋だけでは生きていけない。

 基は責任のある立場で、周囲の期待を一身に背負い、これまで生きてきた人。
 好き勝手に生きることなど、許されない立場にいるのだ。


 沙耶は奥歯を噛みしめる。
 砕けるかと思うくらい、噛みしめる。


「お前が身の程をわきまえんというのなら、こちらにも考えがある! 基、お前にこの会社を任せることはできん!」


 広隆の一喝に、沙耶はたまらず基を突き飛ばし、声を上げた。


「……違います。基さんが悪いんじゃ、ありません!」
「沙耶……?」
「わっ、私がっ……私が、……」


 沙耶の大きな目から、涙がこぼれた。



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