逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 その母が、小さな沙耶を抱き上げていた。
 その細い腕のどこにそんな力があるのだと、沙耶が心配するくらいに、力強く。


『さぁや。お母さんはさぁやが大好きよ。世界で一番大好き』


(ああ……安全な場所……。そうだ。幼い私にも、安全で、愛される場所があったんだ……。)


 沙耶の頰を熱い涙が流れる。

 
 母のことを思うとき、いつも悲しくなった。
 最近では、自分も早死にするかもしれないとか、それでも母に会えるからいいかもしれないと、思うばかりだった。

 けれど違うのだ。

 今まで当然すぎて忘れていたけれど、沙耶もまた、安全な場所で愛されていたのだ。


「うっ……うっ……」


 沙耶は両手で顔を覆い、その場に泣き崩れる。



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