逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 あれは新緑が美しい季節だった。

 いたずらっ子のビスケが、首輪を外して勝手に遊びに行ったのだ。

 それを探しに行って……この辺りまで来て……。

 そして記憶の中の、長い髪をふわふわと波打たせた、人形のような女の子が、目の前の沙耶と重なった。


「うそ、だろ……あの時の……?」
「嘘みたい。でも、嘘じゃない……」


 沙耶は泣きながら、クスクスと笑い始める。


「基、すごいわ。基は約束を守ってくれた。泣いてる私に、またその手品を見せてくれたのね。ありがとう、基……」


 沙耶はベッドから降り、そのまま基の胸に飛び込んだ。




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