逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 母が亡くなる一年前、沙耶の十一歳の誕生日が、今思えば一番幸せだったように思う。


 身長よりも高く積み上げられたプレゼント。バルーンで可愛らしくデコレーションされた部屋に、小学校や、バレエ教室の友人たちがやってきて、沙耶のために歌を歌ったり踊ったりしてくれた。

 そしてなにより、鎌倉の別荘には両親が揃っていたのだ。


 ただ、母の体調はもうその頃悪かったから、数時間で入院先の病院に戻ってしまったのだが。


「お母さん、大丈夫かな」


 会えたのは嬉しいけれど、無理して一時退院してくれたのではないかと思うと、気が沈んでしまう。

 友人たちを見送ったあと、お手伝いさんも帰ってしまった別荘で、沙耶は父を待ちながら、一人で窓辺に座りこんで庭を眺めていた。

 視界に突然、茶色い何かが飛び込んできた。


「きゃあっ!」


 思わず叫び声を上げてしまった。



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