逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 伊織と潤の言葉に、石でも飲んだように気分が重くなる。


「あの、私はどうしたらいいんでしょう」


 藁にもすがる思いで尋ねたが、二人はあっさりと首を横に振り、沙耶を突き放す。


「そんなの、あたしたちが決めることじゃないよ。沙耶が自分で落とし前をつけなきゃね」
「頑張って、沙耶ちゃん」


 どうやら自力で頑張るしかないらしい。


「……はい」


 自分はもう子供ではない。
 当然だと落ち込みながら、報告書を書き終えて、ソルシエールが入っている雑居ビルを出た。


(私が期待させた……。でも期待ってなに? あの人はただ物珍しさで私に声をかけているだけ。すぐに飽きるに決まっているのに。)

 けれど沙耶の心には、あの夜のパーティーの、沙耶を抱いてワルツを踊った基の顔が、鮮やかに刻みつけられているのだ。

 それは忘れようと思っても忘れられない、強烈な体験として、時折沙耶を動揺させるのである。



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