逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 けれど美鶴は真っ直ぐに沙耶を見つめ、首を振った。


「君は僕のことを誤解してるよ。確かに身内に政治家はいるけれど、僕自身は普通のサラリーマンだ。そしてその……」


 美鶴は口ごもりながら、それでも必死に、心の中から言葉を選んでいるように話す。


「……あの時も、今も、必死になっているのは、君を見ていると懐かしいっていうか、また会いたいって思うような何かがあるというか……こんなの女性を口説く常套文句かもしれないけど、本当にそう思ってて……あーもうっ、いい言葉が出てこないなぁ……」


 そして彼は、半ばやけっぱちのように、持っていたビジネスバッグに手を入れ、何かをつかんで、沙耶に差し出す。


「はい、どうぞ」
「え?」
「いいから」



< 88 / 322 >

この作品をシェア

pagetop