浅葱の桜
……この出来事は夢だ。
きっと今さっきの悪夢の延長線上なんだ。
そう納得させて再び体を横にする。
頬をすり寄せてくるききを優しく抱きしめるときつく目を閉じた。
こんな悪夢二度とゴメンだ。
そうら、私の心の奥に潜んだ闇から目を逸らしながら眠りに誘われる。
こくこくと瞼が閉じていく。
「沖田……さん…………」
ふっと沖田さんの姿が瞼の裏に映る。
口元を血で汚した沖田さんはそれでも強いひかりをその目に宿していて。
いつの間にか追いかけている。
彼に伝えたい事があった筈なんだ。それを表すだけの言葉を私は持っていないけれど。
「ーーーーーーーー」
ポツリと零した声は言葉にならずにききと美櫻の寝息に紛れて消えた。