浅葱の桜
「総司。テメェがこいつの面倒を見てやれ」
「な……何を言って!」
「おお! それは名案だ!」
沖田さんと近藤さんの声が見事に重なった。
それにしても、土方さん。何であなたはそんな条件を出したんですか!
「土方さん、それは何の冗談ですか!」
「冗談なんか俺が言うと思ってんのか? 総司」
「だったら尚更です! 俺にこいつを監視しろと……? あんたは俺が––––」
そこで言葉を切った沖田さんは私に助けるような視線を向けてくる。
えっと……こういう時、どう返せばいいんだろう?
頭の中でぐるぐる考えて行き着いた結果は、
「あ、ありがとう……、ございます?」
「違うッ!」
ハズレだったみたいです。何て答えればよかったんだろ?
大丈夫です?
「えっと、じゃあ大丈夫、です?」
「……もう無駄。遅いってば」
「どうやら助けを出す相手を間違ったようだな。総司」
畳に膝をついて倒れた沖田さんの肩を土方さんはしてやったりの顔で叩く。
「こいつは一応女だ。男所帯の中に一人放り込んだら隊を乱す結果になりかねん。
その点、お前ならそういう結果になることは少ないだろうからな。
それに仮にバレたとしても怒らせたらこの屯所一怖えお前の部屋に乗り込むなんざ馬鹿はいねぇさ」
力説した土方さんに沖田さんはただただ項垂れていた。
そんなに私といることが嫌なのだろうか?
いや、別に一緒に居たいなんて思っているわけでもないけど、ここまで明らさまだとすごく傷つく……。
「……分かりましたよ。土方さん……」
重い溜息と共に吐き出された言葉。
「よし、なら頼んだぞ。……そして、小娘」
「は、はひっ!」
「今のお前の名前だとすぐ女だとバレる。だから男物の名前を考えろ」
……はい?
私は今土方さんに言われたことの整理がつくのに瞬き数回分の時間を要した。