浅葱の桜
「ふむ……」
近藤さんは考えこむように顎に手を当てた。
「彼女の身の潔白は証明されたわけではないし、かといってこの場に止め続けるのも……。
しかも、誰かに狙われているとなればなおさら放ってはおけまい……」
独り言、大きいですよ……?
私のことを心配してくれているのは助かるけど、迷惑を掛けるわけにはいかない。
「わ、私のことなら心配しないでください! 私、自分の身は自分で守れます」
剣の腕になら多少の自信はある。
なので、ここから出て行くことを許してほしい、そう言おうとして途中で阻まれた。
「いいや、いかんいかん! 君のような女を襲われる可能性があるというのに放ってはおけん!
そんなのは武士の名折れだ! どうだ? 美櫻くん。ここで過ごしてみては」
「そんなの駄目に決まっているでしょう! 女の身でこんな場所に置くなんて!
いくら危ないからといって男所帯に一人放り込ませるのは別の危険があります!」
近藤さんが言い終わるのを待つ前に沖田さんは近藤さんに噛み付いた。
それまで感情の起伏を見せなかった沖田さんが。
「それに土方さんが許すわけありません。だから近藤さん。その案だけは諦めてくだ「どうだ? トシ」
沖田さんが腕を組んだ後ろからひょっこり顔をのぞかせた土方さんに驚いた顔をした沖田さん。
あ、やっぱり気づいてなかったんだ。
それを思うと思わずクスッと笑みがこぼれた。
「俺も反対だ。女だとバレる可能性を否定できないし、そもそもここも広くねぇんだ。
諦めてくんねぇか、近藤さん」
土方さんも私がここに留まることには反対のようだ。
まぁ、沖田さんが言った理由と同じだろう。
「で、でも……なぁ……」
それでも引き下がらなかった近藤さんに向かってにやりとした笑みを浮かべた土方さん。
な、なんだろう。嫌な予感が……。
「ただで否定するとは言ってねぇぜ、近藤さんよ。
この小娘をここに置くには一つ。条件がある」