その結婚、ちょっと待った!
だが…。
「よう桃華!」
突然現れたのは尊で、無精髭を生やしていて、前の尊なら清潔感が溢れていて身嗜みはきちんとしていたのに、服装も前と随分変わっていた。
そして私を見つめるその目は怖く恐ろしいもので、ニヤリと笑う尊に一歩後退った。
「何だよ人を見るなり後に下がるなんて。
それよりもまだあの男と付き合ってんのか?」
「た、尊には関係ないでしょ?
私は急いでるから…」
そう言って尊の横を通り過ぎようとしたら私の腕を物凄い力で掴んだ。
「痛っ…」
「逃げんじゃねぇよ!お前らのせいで俺は離婚して挙句の果てに会社までクビになったんだ。その責任を取れよ!」
怒鳴るように言われて私は体がビクッとなった。
このままじゃ何をされるか分からない。
逃げなきゃ…
そう思い尊に掴まれていた腕を思いっきり払いのけた。
「テメェ…」
そう言って私の髪の毛を掴んだ。
「嫌っ!!」
私がそう叫ぶと誰かが叫んだ。
「テメェ!ふざけんなよ!」
聞き覚えのある声がした。
私の髪の毛を掴んでいた尊の手が離れると、今度は尊の声がした。
「イテテテ…」
見ると大和が尊の腕を掴んで捻り上げていた。
「女相手に何してんだよ!」
そう言った大和は尊の腕を離した。
「お前らのせいで俺の人生めちゃくちゃなんだよ!」
「はっ?それは自分のせいだろ?他人に擦り付けんなよ!」
「お前があの時に余計な事を言わなければ離婚だってしなくて済んだし、将来は俺が社長だったんだ。」
「フッ、だから何だ?言われて困るような嘘をついたお前が悪いんだろ?
それからお前がさっき桃華の髪の毛を掴んだ所を動画で撮らせてもらったから今から警察に連れて行くからな!」
大和が尊にそう言うと、慌てて尊は逃げていった。