『それは、大人の事情。』【完】
佑月に何度も頭を下げられ断り切れなかった。というのは建前で、本音を言えば、私も少し"主婦"から解放されたかったんだ。
土曜日なら真司さんも家に居る。たまには親子水入らずで沙織ちゃんと過ごさせてあげるのもいいかもね。
「じゃあ、土曜日のお昼十二時に、式場の前のカフェで待ってるから。一緒にランチしよ」
「了解!」
気分良くランチを済ませ会社に戻ると、いきなり課長に呼ばれ「朝比奈君も大変だね~」と同情の言葉を掛けられた。
意味が分からずポカンとしていたら「話しは聞いたよ。叔母さんが入院して、仕事が終わってから付き添いをしなきゃいけないそうじゃないか……」なんて言う。
叔母さんの付き添い?課長ったら、誰かと間違えているんじゃ……そう思ったけど、次の一言で全てを理解した。
「神矢部長も定時で帰らせてやれって言ってたから、暫くは残業しないで帰っていいよ」
呆れた……真司さんったら、これが部長の権限てやつ?
やれやれと思いながら自分のデスクに戻りため息を付く。
取りあえず他の人に迷惑を掛けない様に出来る仕事は終わらせないと……
三時のコーヒータイムも返上でパソコンのキーボードを打ち続けていたから、さすがに疲れてきた。完全にドライアイになってる目に目薬をさし、固まった肩を大きく回す。
するとオフィスのドアが開き、あの子が入って来たんだ……
―――白石蓮……
彼の事、気にはなっていたけど、なんかバタバタしてて、まだちゃんと謝ってない。