『それは、大人の事情。』【完】
でも沙織ちゃんは「パパの番号覚えてるからいい」と私を押し退けオートロックの扉を閉めてしまった。
「はぁ~……」
ため息しか出ない。沙織ちゃんと仲良くなりたいのに、私を全く受け入れてくれない。
そして、マンションに戻った私は、誕生日会なのにプレゼント持たせるのを忘れてた事に気付き青ざめる。
何やってんだろう……母親なら当然気付く事なのに、やっぱり私じゃダメなのかな……
自己嫌悪に陥る事ばかり。これが私の憧れてた"好きな人と暮らす"って事なの?
思い描いていた同棲生活とはかけ離れた現実に、こんなはずじゃなかったと宙を見つめため息を漏らす。
でも、落ち込んでいる暇はない。もうすぐ真司さんが帰って来る。夕食作らなきゃ……
沈んだ気持ちのまま夕食を作り、洗い物をしていたら沙織ちゃんのお弁当箱の事を思い出し、ダイニングテーブルの上にあるリュックをたぐり寄せた。
「……あれ?」
リュックの中から取り出したお弁当箱は、なぜかずっしりと重く、まさか……と思い蓋を開けると、今朝、私が作った状態のまま残っていた。箸を付けた形跡は全くない。
「うそ……」
沙織ちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべ一生懸命作ったお弁当だったのに……
一気に体の力が抜け、その場に座り込んでしまった。すると、なんとも言えない悲しい気分になり、涙が溢れてくる。
「どうして? 私の何がイケナイの?」
冷たくなったお弁当の上に涙がポトリと零れ落ちた。