『それは、大人の事情。』【完】
―――次の日、私はまた五時に起き、ネットで一番人気だというキャラ弁を必死で作った。写真通りには出来なかったけど、まずまずの出来に自然と顔がほころぶ。
これならきっと、沙織ちゃんも食べてくれるよね。
昨夜、遅くに帰って来た真司さんには、手つかずのお弁当の事は言わなかった。疲れた表情の真司さんに心配を掛けたくないってのもあったけど、この問題は、私一人で解決したかった。
沙織ちゃんがここに居る間は、私が彼女のママだから……
自信作のキャラ弁を幼稚園のリュックに入れ、祈る様な思いで沙織ちゃんを送り出した。
仕事をしてる間も、空になったお弁当箱を想像して落ち着かない。だから、仕事が終わって沙織ちゃんを学童に迎えに行き、マンションに帰ってお弁当箱を開けた時のショックは相当なモノだった。
「食べて……ない」
お弁当箱を持つ手が震え、とても平静ではいられない。
すると、自分の部屋から出て来た沙織ちゃんが、また結花ちゃんの家に遊びに行くと部屋を出て行こうとする。冷静さを失っていた私は、初めて沙織ちゃんを叱った。
「許しません! こんな時間に迷惑でしょ?」
「迷惑なんかじゃないもん。結花ちゃんもおいでって言ってた!」
「なら、結花ちゃんに来てもらいなさい。それなら構わない」
沙織ちゃんの腕を掴み大声で怒鳴ると、沙織ちゃんが私の足を蹴り、子供とは思えない程の強い力で突き飛ばしてきた。ほんの一瞬怯んだ隙に、私の手をすり抜け沙織ちゃんが玄関に向かって走り出す。