『それは、大人の事情。』【完】
白々と夜が明け、遮光カーテンの隙間から朝日が差し込む。気怠い朝を迎えた私は重い体を起こし、まだ眠っている真司さんを残して寝室を出た。
沙織ちゃんも昨日は寝るのが遅かったから、まだ起きてくる気配はない。
私はキッチンで一人、目覚ましのブラックコーヒーを飲みながらスマホを眺めていた。
どうしよう……
何度もスリープを繰り返すスマホのディスプレイには、白石蓮の名前が表示されている。もう数十分、私は彼に電話をするかどうか迷っていたんだ。
昨夜の真司さんの嘘と、白石蓮が言った『利用されてるんじゃないの?』という言葉が繋がっているような気がしてならない。
でも、確かめたいと思う反面、怖いという気持ちもあり、電話を掛ける事を躊躇っていた。それに、あんな風に怒鳴ってしまったから余計電話しづらい。
早くしないと二人が起きてくる。昨日の事を謝り、それとなく聞いてみようか……
一つ大きく深呼吸して、恐る恐るディスプレイに触れた。呼び出し音が鳴り、それに合わせる様に私の心臓も大きく高鳴る。
『……はい』
眠そうな声。まだ寝てたんだ……
「せっかくの日曜に、朝早くからごめんね。昨日の事が気になっちゃって……」
低姿勢でそう言うと、電話の向こうから彼のため息が聞こえた。
『気になる事って、俺を怒鳴った事? それとも、部長さんの事?』
「それは……両方だよ。君を怒鳴ったの悪かったって思ってるし、真司さんの事も冷静に聞けば良かったって反省しる」
でも白石蓮は、私の心を見透かしているかの様に『それ、嘘だよね?』と呟く。