『それは、大人の事情。』【完】
私は、今まで数えきれないほど沢山の嘘を付いてきた。そもそも偽りの人生だったら、嘘を付く事にそれほど抵抗はなかった。なのに、こんな小さな嘘を付いただけで、有り得ないくらい動揺してる。
その動揺を真司さんに悟られるのがイヤで、彼に背を向けたまま話していた。
「そういう事なら仕方ないな。夕飯までには帰って来るんだろ?」
「あ、うん、そんなに遅くならないから」
明るい声で答えだが、罪悪感で胸がキリキリ痛む。だから、せめて真司さんに迷惑を掛けないように、お昼まで掃除や洗濯。そして買い物と、全ての家事を済ませマンションを出た。
カフェに着いたのは、午後二時を少しまわった頃。店内は数組の客が遅いランチを楽しんでいるだけで思いの外空いていた。
オーナーに挨拶し、いつものオープンテラスに座ると、すぐに白石蓮が現れた。
「来てくれたんだね」
「あんな事言われたら来ないワケにはいかないでしょ?」
嫌味交じりにそう言うと、フッと笑った彼が私の前にオーナー手作りのチーズケーキを置き、静かに腰を下ろす。
「えっ?私、頼んでないんだけど……」
「これ、俺のおごり。食べてよ」
電話では不愛想だったのに、この変わり様は何?めっちゃ機嫌がいいんだけど……ちょっと拍子抜けだ。
「それで、君の知ってる事ってなんなの?」
チーズケーキを一口食べ訊ねると、彼が真顔で話し出す。