『それは、大人の事情。』【完】

真司さんは、沙織ちゃんの世話をしてくれる女性を求めていたって事?純粋に私を愛してくれたから結婚しようとしたんじゃないの?


フォークを持つ手が止まり、言葉を失う。


「だから俺は、梢恵さんが部長さんに利用されてるんじゃないかって思ったんだよ」


眉を下げ、憐れみの表情で私を見つめる白石蓮。


確かに、そんな話しを聞けば私が利用されてるって思うよね。佑月だって、私が真司さんと同棲するって言った時、娘も一緒に暮らすって分かると大丈夫かって心配していたもの。


「こんな事言ったら梢恵さんが傷付くって分かってたけど、黙っていられなかった。梢恵さんが不幸になるの見たくなかったから」

「……私の事、心配してくれたんだ」

「当然でしょ? 梢恵さんは俺にとって大切な人なんだから」


大切な人か……白石蓮の気持ちは嬉しいけど、年下の彼に心配されるなんて、なんか情けない。


「教えてくれて、有難う。でも大丈夫だから。たまたま真司さんと沙織ちゃん、三人で住む事になったけど、私は利用なんてされてないから……安心して」


最高の強がりだった。年下の白石蓮に、弱い自分を見せたくない……


「はぁ?安心なんて出来ないよ。それとも何? これも大人の事情とか言うワケ?」

「そう、大人の男と女の間には色々あるの。これは、私と真司さんの問題。君には関係ない事だから……」


なんて偉そうに言ったけど、実際は、作り笑いも出来ないほど動揺していた。


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