『それは、大人の事情。』【完】
私を見る白石蓮の視線が痛い……お願い。そんな目で見ないで―――
堪らず、食べかけのチーズケーキを豪快に口の中に押し込み「うん、やっぱ、オーナーのチーズケーキは最高だね」と声を弾ませる。
でも彼は頬杖をつき、何か言いたげに私を見つめている。
やめて。これ以上、そんな目で見られたら弱音を吐いてしまいそうで怖い。
だから揺れ動く気持ちを必死で隠し、話題を変えようとした。
「あ、そういえば……昨夜、あれから理央ちゃんとどうだったの?」
「どうだったって、何が?」
話しをすり替えられ少し不機嫌そうな顔をする白石蓮。でも、それに気付かないフリをして話しを続ける。
「だから~理央ちゃんと上手くいったのかなぁ~って思って。理央ちゃん、君の事好きみたいだったし……」
「森下とエッチしたかって事?」
ズバリ直球で返され、こっちの方が照れてしまう。
「う、うん……」
「それは、俺と森下の問題でしょ? 梢恵さんには関係ない事だよ」
「あ……」
なんか一本取られたって感じ。確かに私には関係ない事だ。
「気になる?」
「べ、別に……言いたくないなら言わなくていいよ」
けど、なんだろう?この感じ。心がザワザワして落ち着かない。
爽やかな風が吹き抜けて行く中、私と白石蓮は暫し無言で視線を絡め、お互いの胸の内を探り合っている様だった。