『それは、大人の事情。』【完】
両親に厳しくしつけられた私には、沙織ちゃんの言いなりになってる真司さんが理解出来ず、歯がゆくて仕方なかった。
なんだか私まで食欲なくなっちゃった……
箸を置き、二人の着替えを持って脱衣所に行くと浴室からボソボソと話し声が聞こえた。が、特に気にする事なく脱衣所を出ようとしたんだけど、二人の会話の中に私の名前が出たので、つい気になり立ち止まってしまった。
「―――梢恵に他に好きな男がいる? どうしてそう思うんだ?」
えっ……私に男? どういう事?
予想もしていなかった真司さんの言葉に驚き、息を殺して擦りガラスを見つめ聞き耳を立てる。
「だって、お姉ちゃん嘘付いたもん。あの人、マンションで男の人のパジャマ畳んたでいたから、それパパの? って聞いたの。そしたらね、お姉ちゃん、そうだって言ったんだよ。
なのに、そのパジャマを入れた紙袋を持ってたのは、お姉ちゃんのマンションの前で会った男の人だったもん」
「梢恵のマンションの前で会った男?」
「ほら、青い目のお兄ちゃんだよ」
「えっ? あの子が?」
一瞬呼吸が止まり、全身の血がサーッと引いていくのがハッキリ分かった。
あぁ……あの時の事、沙織ちゃんは覚えていたんだ……別に真司さんを裏切ったワケじゃないけど、沙織ちゃんに嘘を付いたのは事実。
私は沙織ちゃんを子供だと思って甘く見ていた。小さくでも沙織ちゃんは女。私の近くに真司さん以外の男が居るって、敏感に感じとっていたんだ。