『それは、大人の事情。』【完】
どうやって誤魔化そう……
キッチンに戻った私は、言い訳を考えるのに必死だった。でも、お風呂から出て来た真司さんは怒っている風でもなく、探りを入れてくる事もなかった。
それは、寝室で二人っきりになっても同じで、普段と全く変わった様子はない。言い訳をせずに済んだが、かえってそれが不気味だった。
なぜ真司さんは白石蓮の事を聞いてこないのだろう? 沙織ちゃんの話しを信じていないのかな? それとも、もう私に興味がなくなり、どうでもいいと思っているのか……
困惑しながらベットに入り明かりを落とすと、真司さんが間接照明を点け、ベット横の椅子に座ってファイルを開く。
「仕事の資料?」
遠慮気味に訊ねる私に、真司さんは微かな笑みを浮かべコクリと頷く。
「あぁ、明日、朝一の会議で使う資料だ。少し確認しとこうと思ってな。梢恵は気にせず寝ていいぞ」
「うん……」
結局、真司さんは白石蓮の事を話題にする事はなかった。そして私も、真司さんにあの事を聞く事が出来ないまま、四日が過ぎた―――
沙織ちゃんのお迎えももう明日で終わりだな……って思いながら定時丁度にタイムカードを押し、駅へと急いでいると、スマホに学童から着信があった。
学童から電話が掛かってくるなんて初めて。何事かと思い電話に出ると、先生が申し訳なさそうに『なるべく早く来て頂けませんか?』と言う。
わざわざ電話してくるなんて、もしかして沙織ちゃんに何かあったんじゃ……