『それは、大人の事情。』【完】

余りにもあっけらかんとそう言うものだから、こっちの方が照れてしまう。


「それに俺、母親を恋しがるほどガキじゃないから。これでもちゃんと自立した男だよ。もうすぐ二十歳になるしね」

「そ、そう……」

「だから俺の事、子供扱いしないでよ。なんなら、一回寝て確かめてから付き合うかどうか決めてくれてもいいよ」


挑発的な言葉を発し、私の唇を指でゆっくり撫でる。そんな自信満々な白石蓮の態度に、私は完全に翻弄(ほんろう)され、すっかり主導権を奪われてしまった。


「ねぇ……いいでしょ?」


耳元で囁かれる吐息混じりの甘い声に身震いし、イケナイと思いつつ白石蓮を男として意識してしまう。だから腰にまわされた彼の手を振り払う事が出来なかった。


でも、私はまだ真司さんと付き合ってる。このまま彼を受け入れていいのかな?


微かに残る理性と罪の意識から白石蓮に身を委ねる事を躊躇していたが、私はもうすぐ真司さんにフられるんだ―――そう思ったら躊躇う事がバカらしくなってきた。


真司さんの言葉を信じて結婚を夢見ていたのに、結局私は捨てられるんだ。それなら私が誰と寝ようと真司さんには関係ないよね。


長い睫毛の奥の薄いブルーの瞳が妖しく揺れ、徐々に近づいてくる。覚悟を決めた私は静かに瞼を閉じた。


でもその時、私のスーツのポケットの中でスマホが着信を知らせる軽快な音楽を奏で、夢から覚めた様にハッと目を見開く。


―――あ……私、何やってるんだろう……


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