『それは、大人の事情。』【完】
タオルに包まれていたのは、沙織ちゃんのお弁当箱。
恐る恐るその小さなお弁当箱を開けると、やっと止まった涙が再び溢れ出す。私の涙腺は完全に崩壊し、目の前が滲んんで何も見えなくなってしまった。
「食べてくれたんだ……初めて食べてくれた」
「沙織が梢恵のキャラ弁、美味しかったって言ってたよ。友達に見せたら皆羨ましがってたって、嬉しそうに笑ってた」
「沙織ちゃん……」
空っぽのお弁当箱を胸に抱くと、ハラリと一枚の紙が床に舞い落ちる。それは、可愛い花柄のメモ用紙。そこに書かれていたたどたどしい文字を見て、私はまた号泣してしまった。
《おねえちゃんママ。だいすきだよ》
「真司さん、沙織ちゃんが私の事……ママだって」
メモ用紙を真司さんに見せ、何度も読み返す。こんな満たされた気持ちになったの、初めてかもしれない。でもその反面、こんなに幸せでいいんだろうかと不安になる。
「やっぱり、俺の目に狂いはなかった。梢恵を好きになって良かったよ」
「ホントにそう思う?」
「もちろんだ。沙織が認めた女なんだから」
真司さんはそう言うと、私の体を軽々と抱き上げ、少し乱暴にファーの上に下ろす。そして、弾む体を抑え込む様に上になると、荒々しく私の唇を奪った。
久しぶりだったからか、痺れる様な刺激が体中を駆け巡り、彼に触れられている部分が燃える様に熱い。体がゾクゾクと疼き、我慢出来ず彼の背中に爪を立てていた。
情熱的な彼のキスは、一瞬にして私を恍惚の世界へと誘(いざな)う。