『それは、大人の事情。』【完】
私が夢中で真司さんを求めるのはいつもの事。でも、普段はそんな私を焦らして楽しんでいる真司さんが、今日はどうしたんだろう? そんな余裕が感じられない。気付けば、全てを脱ぎ終える前に一つになっていた。
そして、深く交わり意識が朦朧とし始めた時、彼は苦しそうに息を吐くと私の名を呼び「結婚しよう」と言ったんだ。
「けっ……こん?」
「そうだ。俺達には、もうなんの障害もない。すぐにでも籍を入れよう」
本当に、こんな幸せでいいのかな?もしかして、これは夢なのかも……夢ならどうか覚めないで。このままずっと、夢の中に居させて……
そんな事を願いながら断続的に与えられる刺激を必死でやり過ごす。
―――そして、ソファーのきしむ音が途絶えた後も、私達は火照った体を密着させたまま惜しむ様に唇を重ね、指を絡める。
「梢恵のご両親にも挨拶に行かなきゃな。来週の週末にでも行くか?」
来週の週末……そう言われて気が付いた。来週の土曜日は、白石蓮の二十歳の誕生日。その日、彼と会う約束をしていたんだ。
あの子と約束した時は、まさかこんな展開になるなんて思ってなかったから……
真司さんには、取りあえず親に電話して都合を聞いてみると言って話しを濁したが、白石蓮の事はどうしよう。
真司さんとの結婚が現実味を帯びてきた今、これ以上、曖昧な態度を取るのは良くない。期待させれば、それだけ彼を傷付けてしまうもの。ちゃんと話さなくちゃ……