『それは、大人の事情。』【完】

めちゃくちゃな話しだ。そんな高額なモノを私がプレゼントするなんて、絶対おかしい。怪しまれるに決まってる。


「断られても私の事、恨まないでね」

「うんうん、その時は、また違う方法を考えるから。取りあえず渡してみて」


私の心配をよそに、オーナーはのほほんと笑ってる。


てなワケで、カメラをマンションに持ち帰ったんだけど、真司さんに見つかったら説明に困る。なので、玄関横の沙織ちゃんが使っていた部屋のクローゼットに隠した。


そして次の日の夜、電話ではなくメールで、白石蓮に会う場所と時間を伝えた。私が指定したのは、先日、仕事で訪れたあのレストラン。


あそこなら彼のアパートからも近い。それにシェフも優しかったし、お店の雰囲気も良かった。きっと、彼も気に入ってくれるはず。



―――翌日。白石蓮の誕生日


少し早めに一人分の夕飯を作り、リビングでパソコンをしている真司さんに声を掛ける。


「ごめんね。じゃあ、行って来る」

「あぁ、久しぶりに会うんだろ。俺の事は気にしないでいいから、ゆっくり楽しんでおいで」


彼には昨日の内に、夕方から大学時代の友人と会って食事してくると言ってあった。真司さんに嘘を付くのはこれが最後と心に決め、こっそりカメラケースを持ってマンションを出る。


白石蓮に会ったら、真司さんと結婚するってちゃんと言わなきゃ……あの子と二人っきりで会うのも今日が最後だ。


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