『それは、大人の事情。』【完】
「俺はもう、カメラはやめたんだよ。梢恵さんまで叔父さんの気まぐれに乗っかって、俺を騙そうとするなんて……酷くない?」
頬杖をつき、不機嫌な顔をする白石蓮を見て、それは違うと思った。
「君は勘違いしてる。オーナーは気まぐれで君に写真を撮って欲しいって言ってるんじゃない。心の底からそう願ってるんだよ。そうじゃなきゃ、カフェを改装してまでギャラリーを造ろうとは思わないでしょ?
君も自分が大人だって言うなら、もっと人の気持ちを考えられる人間になりなさい」
それからオーナーの気持ちを彼に訴え続ける事、三十分。徐々に白石蓮の顔つきが変わっていった。
「もういい……叔父さんの気持ちは分かったよ。でも、少し考えさせてくれない? 俺だって、一大決心で大好きだったカメラを捨てたんだ。それなりの覚悟だったんだよ」
「そう、分かってくれたらいいの。君の気持ちも分かるし、少し考えてみて?」
なんとかカメラは受け取ってもらえる事になり、ホッと胸を撫で下ろす。でも、もう一つ、クリアしなきゃいけない問題があった。
「それと……この前の話しだけど……」
私は真司さんとの事を包み隠さず全て話し、結婚する事になったと白石蓮に告げた。
彼が怒り出したらどうしようと思ったけど、予想に反して冷静に私の話しを聞いてくれて、特に声を荒げる様な事はなかった。
「―――そういう事だったんだ……」
「うん、真司さんは、私の事を真剣に考えてくれてたの。そして、絵美さんとの復縁を断って、娘を引き取るのも諦めてくれた」