『それは、大人の事情。』【完】
「部長は、マジだったってワケか……」
「えぇ、だから……ごめんね。君の気持ちには応えられない」
やっと言えたと安堵したが、それとは真逆の感情が胸を締め付ける。私の視線は彼のカバンに向いてた。
「私達は、無理だったのよ。君には私なんかより、歳の近い娘の方がお似合いだよ」
それは、白石蓮に言っているというより、自分に言い聞かせているという方が正しかったかもしれない。認めたくないけど、私は真司さんを愛しながら、彼にも心を奪われていた。
その証拠に、誰かも分からないあのプレゼントの主に嫉妬していたもの。でもこれで終わり。これからは、真司さんだけを愛して生きていく。
「じゃあ、そろそろ帰るね。今まで色々、有難う」
別れの言葉を口にすると、寂しい様な、切ない様な、なんとも言えない喪失感が私を襲う。
私達の歳が近くて、もっと早く出会っていたら違った結果になっていたかもしれないね。
そう心の中で呟き席を立つ。すると、ずっと下を向き微動だにしなかった彼が顔を上げ「まだ話しは終わってない。座って」って低く小さな声で怒鳴った。
「写真……また撮るよ」
「えっ……?」
「このカメラで、また写真家を目指す。それが梢恵さんの望みならそうする。だから、俺の望みも聞いて欲しい」
「君の望み?」
「そう、カフェのギャラリーに飾る写真……そのモデルになって欲しい。その願いを叶えてくれたら、俺は梢恵さんを忘れる。もう部長さんとの仲を邪魔したりしない」