『それは、大人の事情。』【完】

なんとか約束の時間に間に合いホームで彼の姿を探していたら、ベンチに座り、薄曇りの空をぼんやり見上げている白石蓮を見つけた。その横顔は、何を考えているんだろう。とても寂しそうに見えた。


彼の横に立ち「おはよう」って声を掛けると、彼の顔がパッと明るくなる。


「あ、梢恵さん、おはよう。来てくれないんじゃないかって心配してたんだ……良かった」

「来るよ……有給まで取って会社休んだんだから」


素っ気ない私の言葉に「だね」と苦笑いを浮かべる白石蓮。それから私達はお互い喋り掛ける事なく、次に言葉を交わしたのは、到着した新幹線に乗り込んだ後だった。


「名古屋まで二時間くらい掛かるから寝てていいよ。近くになったら起こすから」

「眠くないから大丈夫」


こんな至近距離に彼が居ると思うと、なんか意識してとても寝れそうにない。きっと、そう思ってるのは私だけ。この子はなんとも思ってないんだろうな……


なんて考えてる自分が情けなくて、ソッと視線を窓の外に向けると、白石蓮が唐突に「……それで、もう結納は済ませたの?」って聞いたきたんだ。


「えっ?」


そんな事聞かれるとは思ってなかったから戸惑い小さく頷く。


「そっかー……結婚式はもちろんチャペルでしょ?」

「う、うん」

「梢恵さんのウエディングドレス姿綺麗だろうな~」


屈託のないその笑顔が、私の胸を締め付ける。


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