『それは、大人の事情。』【完】

「自分の部屋? もしかして、この広い部屋、私一人で使うの?」

「ヤダなぁ~当たり前じゃない。俺がここに泊まっちゃマズいでしょ?」


あぁ……そうだよね。私ったら何考えんだろう。


「俺は三階のシングルに泊まるから安心して」


安心してか……恋人でもなんでもないんだから当然だよね。でも、逃げるみたいに慌てて出て行かなくてもいのに……


一人になった寝室でベットに寝転び苦笑する。さっきまで広々とした部屋に感動してたのに、今はその広さが空虚感を深めていく。


あの子の本当の気持ちが知りたいと思ったけど、その前に、私はどうしたいんだろう。彼の言動に一喜一憂して、胸弾ませたり落ち込んだり。


彼を忘れる為の撮影旅行だったはずが、近くに居ると気持ちがどんどんあの子に傾いていって、正直、危うさを感じてしまう。でもちゃんと分かってるんだよ。白石蓮とはこの先、一緒には居られないって。


私はもう真司さんと結納も済ませ、結婚の日取りも決まってる。私の親も結婚を喜んでるし、あちらのご両親もとてもいい人達だ。


そして何より、私と真司さんの為に沙織ちゃんと絵美さんは真司さんを諦めてくれた。沢山の人が私と真司さんの結婚を望んでくれてる。その思いを裏切る事なんて出来ない。出来ないけど、私は……


あぁ……ダメだ。考えれば考えるほど、あの子の笑顔が浮かんできて胸が苦しくなる。


お願い……誰か教えて。私はいったいどうしたらいいの?


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