『それは、大人の事情。』【完】
結局、夕食までの数時間、ベットの上でぼんやりと天井を眺め過ごした。もちろん私の問いに答えてくれる人はなく、悶々とした気持ちは晴れなかった。
白石蓮と約束した午後六時に二階のレストラン行くと、先に来ていた彼が窓際の席に座り、頬杖をついて日暮れ間近の海を眺めていた。
夕食はビッフェスタイル。普段はなかなか食べられない高級な海の幸が盛られた大皿がいくつも並んでいて、それを少しずつトレーに乗せ席に戻ると、彼が私のグラスにワインを注いでくれた。
「じゃあ、明日の撮影の成功を願って……乾杯」
ワイングラスが重なり、琥珀色のワインが揺れる。その向こうには、白石蓮の笑顔。
「梢恵さん、ここに来てくれて、本当に有難う。めっちゃ感謝してる」
「やめてよ。そんな改まって……ここに来たのは、君の為だけじゃい。私の為でもあるんだから」
「梢恵さんの為?」
「……そう、だから気にしないで」
でも、そんな事言われたら気になるよね。当然彼は、それは何かと聞いてきた。でも言えるワケないじゃない。君の事を吹っ切る為だなんて。
「それで、明日の撮影は何時から?」
「あ、あぁ……さっき支配人に聞いたら、明日の日の出は五時三十一分だって。だから遅くても五時には開始したい」
「分かった。今夜は早く寝なきゃね」
「うん、一番綺麗な梢恵さんを撮りたいから寝不足はダメだよ。あ、それと、今夜から下着は付けないでね。体に下着の痕が残ると困るから」
えっ? それって、まさか……