『それは、大人の事情。』【完】
ガウンがハラリと床に落ち、一糸纏わぬ姿で彼の背後に立つ。例え後ろを向いていても、この状態で手の届く距離に白石蓮が居ると思うと、熱を帯びた体が更に上気する。
今この子が振り返ったらどうなるだろう……そんな事を考えながら彼から渡された白いクロスを裸体に巻き付け「いいよ」と声を掛けた。
ゆっくり振り返った白石蓮の視線が私に向けられた瞬間、今度は羞恥でジワリと肌に汗が滲む。
「梢恵さんの肌……綺麗だ」
「そんなに見ないで……恥ずかしい」
思わず視線を逸らし横を向くが、彼はカメラを手にし、まるで何かに取り付かれたみたいに夢中でシャッターを切っている。
ファインダー越しに感じる彼の熱い視線―――
連続して眩しいフラッシュが光るたび、触れられてるワケじゃないのに、肌がジンジンと疼き、まるでその視線に愛撫されてるみたいな不思議な感覚に陥る。
その時、水平線の彼方が白々と明るくなり、雲が紅く染まりだした。
―――日の出だ……この一瞬の為に私達はここに来たんだね。
「梢恵さん、朝日に向かって立って! それと、布を腰まで下げてくれる?」
私は白石蓮の言う通り、窓の前に立つと纏っていたクロスを腰まで下げ、真っすぐ朝日を見つめた。
燃える様な朱色の光が徐々に闇を貫きその姿を現そうとしている。それと同時に、一気に鮮明になる視界。深くて濃い碧色の海が明るい蒼に変わっていく。