『それは、大人の事情。』【完】
こんなに美しい瞬間があるって事を、私は初めて知った。
―――この輝きを体全体で感じたい……
そう思ったから、なんの躊躇いもなく体に纏っていたクロスを解き、その端を掴むと大きく腕を広げた。何も身に着けず、直接、全身で光と風を受け止めたかったんだ。
今まで味わった事のない解放感。無数の光の矢が私の体に吸い込まれ、それが体の中で弾けている……そんな感覚が心地よかった―――そしてそれは、呪縛からの解放。
「あぁ……気持ちいい……」
私を縛り付けていた全てのモノから解き放たれ、心が軽くなったみたいな気がした。
「そのまま動かないで!」
背後から白石蓮の叫ぶ声が聞こえる。
「最高だよ。梢恵さん。めっちゃ綺麗なシルエットだ……」
クロスが風になびいて舞い上がり、私の髪も波打つ様に揺れていた。
もしかしたら私の裸を彼に見られてるのかもしれない。この姿を白石蓮はどんな気持ちで見ているんだろう? 彼の気持ちが知りたい。どうしても知りたい。そして、この溢れる想いを彼に伝えたい。
でも、それを言ってしまったら、多くの人を裏切る事なる。順調に回っていた歯車が止まってしまうかもしれない。それでも……いいの?
私は再び布を体に巻き付け振り返った。するとシャッター音が消え、白石蓮が真顔で立ち上がる。
「思い通りの写真撮れた?」
「うん、思ってた以上のいいショットが撮れた。梢恵さんは俺にとって、最高のモデルだったよ」
「あ……」
"―――だったよ"って過去形が、清々しかった私の心に影を落とす。。