『それは、大人の事情。』【完】
佑月が出て行ったドアを見つめ、妊娠すると理解出来ない行動とる様になるのかと首を傾げる。そして、渡された封筒に視線を落とした。
表にも裏にも何も書いてない。誰からだろう……
気になり封筒を開けようとしたら、ギャラリーで写真を眺めていたオーナーが私を呼ぶ。仕方なく開け掛けた封筒をテーブルの上に戻し、オーナーの隣に並んで立った。
「なんですか?」って声を掛けるとオーナーは、二つの写真から視線を逸らす事なく言う。
「蓮の写真のモデル……これって、梢恵ちゃんでしょ?」
「えっ?」
驚いてオーナーの横顔を見つめると、彼は私の方を見てニッコリ笑った。
「蓮が撮影旅行から帰って来た時、言ってたよ。この写真のモデルは、俺が世界で一番好きな女性だって」
蓮がそんな事を……その時はまだ、私の事好きでいてくれてたんだね……
「当時は、この女性が誰か言わなかったんだけど、三日前、蓮から電話があってね。教えてくれたんだ。このモデルが梢恵ちゃんだって」
蓮、オーナーに話したんだ……
「……そうなの。でも、もう昔の事。今は理央ちゃんが一番好きだから……」
苦笑いを浮かべる私の横で、オーナーが表情を曇らせる。
「ねぇ、梢恵ちゃん。梢恵ちゃんは、どうして蓮がイギリスに行く決心をしたか……分かる?」
「えっ? 決心も何も……蓮は憧れのアレン・ノーマンのアシスタントになりたくてイギリスに行ったんでしょ? あんなに喜んでいたし」