『それは、大人の事情。』【完】
それは、親友の佑月にさえ同情されたくないという私の女としてのプライド―――だったのか?
「そう、ならいいけど……お願いだから修羅場は勘弁してよ」
「分かってる」
素直に頷いたけど、私の心は不安で押し潰されそうだった。部長の事は信じたい。でも、佑月の話しが本当なら、専務の娘とよりを戻す事だってあり得るんだ。
もう辛い恋はしないと決めたのに、私はまた同じ事を繰り返してる。どうして私ばっかりこんな思いしなきゃいけないんだろうとため息を付くと、私の横で佑月もため息を付いている。
その様子が妙に気になり声を掛けてみたら、眉を下げた佑月が苦笑いしてボソッと言う。
「ホントはね、私も色々あって……梢恵に偉そうに意見してる場合じゃないんだ……」
「どうしたの?」
「うん……彼とちょっと……なんか、結婚式どころじゃなくなってきた」
ロングの黒髪をかき上げ、虚ろな目で一点を見つめている佑月。その理由を聞くと、昨夜、彼と会う約束をしていたのに、彼は佑月のマンションには来なかったらしい。
電話しても電源が切れていて、ラインをしてもメールをしても返事がなった。何かあったんじゃないかと心配になった佑月は、彼のマンションに行く事にしたそうだ。そして、合鍵で部屋に入り帰りを待っていたら……
「深夜二時にやっと彼が帰ってきたんだけどね。様子がおかしくて……」
「おかしいって、どういう風に?」