『それは、大人の事情。』【完】
蓮がそこまで私の事を考えてくれてたなんて……
じゃあ、あの時、自分の気持ちを素直に蓮に伝えていれば、私と蓮は一緒に居れたの? 今でも、あの笑顔が傍にあったの? 私は、自らの手で幸せを手放してしまったって言うの?
「オーナー、実はね、私はあの時、婚約者と別れて蓮に告白するつもりでカフェに来たんだよ」
今更、そんな事言っても仕方ないと思ったけど、言わずにはいられなかった。
「うん、その話し、さっきまでここに居た佑月さんに聞いたよ」
「えっ……佑月に?」
オーナーが言うには、蓮からの電話で今の話しを聞いた翌日、佑月がこのカフェに来て、私の現状を話し、オーナーにお願いがあると言ったそうだ。
「佑月さんは、蓮の本当の気持ちを全て知ってて、僕にその話しを梢恵ちゃんに教えてあげて欲しいって……」
「じゃあ、今日、佑月が私をここに誘ったのは……」
「そうだよ。梢恵ちゃんに蓮の本当の気持ちを伝える為、佑月さんが梢恵ちゃんをここに呼んだんだ」
そうだったのか。だからランチを食べたらすぐに帰っちゃったんだ。でも、蓮の気持ちを伝えたいなら、どうして佑月が直接私に言わなかったんだろう。
「佑月さん言ってたよ。『梢恵には、本当の事を知ってもらいたい』って、『あの子は決して梢恵を嫌いになったワケじゃない』って」
「佑月がそんな事を……」