『それは、大人の事情。』【完】
佑月の気持は嬉しかった。けど、蓮と離れてもう九ヶ月。今更あの子の気持ちを知ってもどうにもならない。私達はもう、別々の道を歩き出したんだから。
「でも驚いたなぁ~。僕はてっきり梢恵ちゃんは結婚して幸せに暮らしてると思っていたから……婚約者の人と別れていたなんて知らなかったよ」
「うん……なんか言いづらくて……だからここにも来れなくて……」
カフェに顔を出さなかった事を謝ると、オーナーは「そっか~でも、梢恵ちゃんが結婚してなくて良かったよ」なんて、とんでもない事を言ってくる。
「ちょっと~オーナーったら、私の不幸が嬉しいの?」
唇を尖らせオーナーをギロリと睨むと、なぜかキョトンとした顔をする。
「ヤダなぁ~僕が梢恵ちゃんの不幸を喜ぶワケないじゃない」
「だったらどうして結婚してなくて良かったなんて言うの?」
「えっ? だって、梢恵ちゃんが独身なら蓮と付き合えるでしょ?」
「はぁ? 何それ?」
「梢恵ちゃんこそ、何言ってんの?」
どうも話しが噛み合わない。落ち着いてオーナーの話しを聞いてみると……
「蓮が梢恵ちゃんを好きってのは、過去の話しじゃないよ。現在進行形! 梢恵ちゃんだって、今でも蓮の事が好きなんでしょ? だったら二人は付き合えるじゃない」
「ちょ……ちょっと、蓮が今でも私の事が好きだなんて初耳なんだけど……」
「あれ? 言ってなかったっけ?」