『それは、大人の事情。』【完】
「もぉ~全然聞いてないよ~」
でも、蓮が今でも私の事が好きだなんて……信じられない。
「佑月さんも言ってたよ。今度こそ、想い合ってる二人を一緒にしてやりたいって」
あ、だから今でも蓮の事が好きかなんて聞いてきたんだ。でも、佑月はなぜ蓮の本当の気持ちを知ってたの?
それをオーナーに聞くと……「理央ちゃんに聞いたそうだよ」って返事が返ってきた。
「理央ちゃんに?」
私は大切な事を忘れてた。そうだよね。佑月は理央ちゃんの姉なんだ。私に蓮の本当の気持ちを言うって事は、理央ちゃんを裏切る事になるんだものね。姉としてそんな事出来ないよね。
きっと佑月も悩み苦しんだはず。でも、そんな心配いらないよ。私は理央ちゃんから蓮を奪おうなんて思ってないから。人の幸せを奪った上の幸せなんて望んでない。それを望めば、それ以上の不幸が待ってる。
今までの人生がそうだったから……
でも気掛かりなのは、理央ちゃんが蓮の気持ちを知ってしまったって事。
「きっと理央ちゃん、私の事恨んでるだろうね」
理央ちゃんに申し訳なくて、ギャラリーの写真を見つめ肩を落とすと、オーナーが、さっきまで私が座っていたテーブルを指さす。
「んっ、何?」
「理央ちゃんが梢恵ちゃんの事恨んでるかどうかは、あれを読めば分かるよ」