『それは、大人の事情。』【完】
まだ少し痛む耳たぶに触れ目を閉じると、アルコールが入ってるせいか、強烈な睡魔に襲われ瞼を開ける事が出来ない。
メイク落とさなきゃ……って思ったけど、もう限界。明日の肌のコンディションを心配をする余裕も気力もなく枕を抱きかかえる。
少しだけ……三十分だけ寝よう。
そんな事を考えながら深い眠りに堕ちていく―――
―――ピンポーン……
「んっ?何?」
突然鳴った玄関のチャイムの音に驚き、飛び起きて辺りを見渡す。三十分のはずが、すっかり熟睡してしまった様で、今が夜なのか朝なのかも分からない。
そんな寝ぼけた状態だから冷静な判断が出来ず、普段は誰が来たのか確認してから玄関のドアを開けるのに、いきなりドアを全開にしてしまった。
そこに立っていたのは、肩で大きく息をし、全身ずぶ濡れの白石蓮。
「えっ……なんなの?」
一気に目が覚めたじろう私に、彼は息を切らしながら「……これ」と言って、右手を差し出してくる。その手には、なくしたはずのあのピアスが……
「今、やっと見つけた」
そう言った白石蓮の顔は、眩しいくらいキラキラした笑顔だった。
「今って……」
腕時計を確認すると、もう深夜二時。彼と駅で別れてから三時間は経ってる。
「嘘でしょ?この雨の中を三時間も探してたの?」
滴り落ちる雨の滴を払いながら頷く彼を見て、完全に呆れてしまった。でも、私はある事に気付き、体が固まる。
「ねぇ、どうして私の住んでるマンションがここだって分かったの?」