『それは、大人の事情。』【完】
「ちょっと、まだ上がらないでよ。部屋が濡れちゃう」
玄関先で彼を足止めしてバスタオルを渡すが、こんなに濡れてたら拭いてもどうにもならない。仕方なくバスルームに連れて行く。
なんでこうなるの?今日はホントに最悪な日だ。
イライラしながらお湯を沸かし、コーヒーを入れて彼が出て来るのを待っていたら「あぁ~サッパリした~」って呑気な声が聞こえ、白石蓮がバスルームから出て来た。
―――が、しかし、上半身は裸のままで、腰にバスタオルを巻いた姿で現れたんだ。
子供だと思っていた彼の体は、私が想像していた以上に大人だった。細身だけどちゃんと筋肉は付いていて、腰のくびれはその辺の女子より色っぽい。
そして何より、シャワーを浴び紅色に染まった若さ溢れる艶やかな肌。
顔だけじゃない……体も綺麗……
不覚にもその美しい裸体に見惚れてしまい瞬きするのも忘れ見入っていた。でもすぐに我に返り、慌てて彼から目を逸らす。
「な、何よ!その格好!」
「だって、俺の服濡れてるし、着る服ないもん」
「あ……」
着替えの事など考えてなかった。急いでクローゼットからジャージを取り出し彼に手渡す。
「私のだから小さいと思うけど、着てないよりはマシだから……」
「えっ?梢恵さんの貸してくれるの?ラッキー!」
「何がラッキーよ?こっちはいい迷惑だよ」
素っ気なくそう言ったけど、まだドキドキが止まらない。
私は、十歳も年下の子を意識しているの?恋愛対象外のこんな子供を?……自分が信じられない。