『それは、大人の事情。』【完】
そりゃ~以前の私は、何人もの男性社員とセフレの関係だった。でもまさか清掃員の人達にそんな風に言われてたなんて……何気にショックだ。
「俺も何度かあの裏口で、梢恵さんが違う男の人と待ち合わせしてるの見掛けたしね」
「で、君も私が好きモノだと思ってたの?」
開き直ってそう聞くと、白石蓮が突然大声で怒鳴った。
「俺は、梢恵さんが好きモノだなんて思ってない!」
「えっ……」
そして今度は眉を下げ、悲しそうな顔をする。
「その男の人達って、梢恵さんの他に彼女がいたでしょ?ねぇ、どうしてそんな危なっかしい恋ばっかするワケ?」
そこまで知ってるとは……恐るべし清掃員の情報網。
「それは……大人の事情だよ。子供の君には分かんない色んな事情があるの」
「大人の事情?」
「そう、君も大人になれば分かるよ」
諭す様に呟くと、空になったマグカップをテーブルの上に置きため息を付く。すると勢いよく立ち上がった白石蓮が唇を噛み締め私を睨み付けた。
「俺を子ども扱いしないでよ!歳は下でも、俺だって男だ。梢恵さんを大切に想ってる一人の男なんだよ!」
そして、座ってる私に覆い被さり、とても小さな声で言う。
「ずっと……好きだった。梢恵さんを初めて見た時から……ずっと。だから、俺の事見てよ」
「な、何?」
慌てて彼の腕から抜け出さそうとするが、身動きが取れない。
「そんなに嫌がらないでよ……何もしないから……梢恵さんを抱き締めていたいだけだから……」