『それは、大人の事情。』【完】
「佑月、聞いて?私達は佑月が考えているようなそんな関係じゃない。あの夜、私が一緒に居たのは、別の人……」
「別の人?じゃあ、その相手をここに連れて来て証明しなさいよ!」
佑月は私の言葉を全く信じてない様だった。真司さんとの事は、暫く秘密にしておきたかったけど、もう黙ってるワケにはいかない。
「その人は……」そう言い掛けた時、後ろから「―――何やってんだ?」って声が聞こえた。全員の視線が声がした会議室の入り口の方に向けられる。
「こんな所で、何をモメてる?廊下まで声が聞こえてるぞ」
真司さん……
慌てたのは修だった。
「神矢部長……すみません、ちょっとした勘違いで……大した事じゃないんです」
「そんな風には見えなかったが?」
どうやら真司さんは、随分前から私達のやり取りを聞いていた様で、佑月に私と修が密会していたのはいつだと尋ねてる。
「なら、朝比奈はシロだな」
「えっ?どうして部長が分かるんですか?」
食って掛かる佑月に、真司さんはニッコリ笑い言う。
「んっ?だってな、その夜、朝比奈と一緒に居たのは、俺だから」
真司さんの言葉に一番驚いたのは、またもや修だった。呆然としている修の目の前で、真司さんが私を引き寄せ頭に軽くキスをする。
「俺達は、結婚を前提に付き合ってるんだ」
「け、結婚?」
これには私を含め全員が目を丸くした。だって、それはある意味、プロポーズ―――