『それは、大人の事情。』【完】
結婚を前提に同棲する事になっていたが、さすがに幼い沙織ちゃんの気持ちを考えると真実を言う事が憚(はばか)られた。
「さあ?どうかな?」
なんとか話しをはぐらかそうとしたけど、沙織ちゃんの追及は続く。
「だから、隠さなくてもいいよ。パパはきっと、お姉ちゃんと結婚するつもりなんだよ。お姉ちゃんはパパが再婚でも平気なの?」
適当にあしらうつもりでいたのに、結構しっかりしてる。今の六歳児ってこんな感じなんだ……
「え、えぇ……私は気にしてないけど……」
「ふーん……パパの事、ホントに好きなんだ」
口をへの字に曲げ、不服そうな顔をしてる。やっぱり、別々に暮らしていても自分の父親が他の女性と再婚するのはイヤなんだ。
詩織ちゃんの当然の反応に胸がチクりと痛み、子供がいる人との再婚の難しさを改めて考えさせられた。
再び会話が途切れシーンと静まり返る部屋。すると、沙織ちゃんが自分のピンクのリュックを開け、取り出したDVDを私に見せ言う。
「ねぇ、退屈だから、これ観てもいい?」
退屈か……そんな事言われたらヘコむじゃない。でもそこは大人な対応をしなくちゃと、笑顔でテレビの電源を入れる。それに、DVDを観てくれたら相手をしなくていいし、私も好都合だ。
すっかりジブリ映画に夢中になってる沙織ちゃんの姿に安心にしていると、洗濯機から乾燥が終わった事を知らせる音が聞こえてきた。
乾いた白石蓮の洗濯物をキッチンまで持ってきて、沙織ちゃんの後ろ姿を眺めつつ畳んでいたら、突然立ち上がった沙織ちゃんがこっちに向かって歩いてくる。