『それは、大人の事情。』【完】
「急な話しで申し訳ないが、沙織は俺が引き取る事になった」
「……えっ?」
「実はな、沙織が俺と暮らしたいって言い出して、その事で絵美と話し合ってきたんだよ」
―――まさに、青天の霹靂……
沙織ちゃんが嫌いとかそういうワケじゃないけど、いきなりそんな事言われても「はい、そうですか」なんて、受け入れられない。
だって、沙織ちゃんと一緒に住むって事は、私が母親代わりになるって事でしょ?そんなの全然ピンとこないし、自信もない。
でも沙織ちゃんの手前、露骨にイヤな顔も出来ず、必死で平静を装っていた。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、真司さんは沙織ちゃんを抱き上げ、諭す様に言う。
「沙織、梢恵お姉さんと仲良くするんだぞ。もうすぐ沙織のママになる人なんだから」
「お姉ちゃんが、沙織のママ?」
「そうだよ。パパと梢恵お姉さんは結婚するんだ。だから、沙織のママだ」
振り返った沙織ちゃんの目が、何かを訴えるみたいに私を睨んでる。どうやら喜んでいるのは真司さんだけの様だ。
沙織ちゃんにしてみれば、それこそ予想外の展開。真司さんと二人で暮らせると思っていたのに、そうじゃなかったんだもの。私は沙織ちゃんにとって、邪魔者以外の何者でもない。
「でも、いきなり三人でっていうのは……沙織ちゃんだって、全然知らない私と一緒に住むのは抵抗があるんじゃ……」
でも、真司さんは沙織ちゃんと一緒に暮らせるのがよほど嬉しかったのだろう。完全に舞い上がり「大丈夫だよ。きっと上手くいくから」と私の心配を一笑した。