『それは、大人の事情。』【完】

―――私って、最低だな。


両親が離婚して、その離婚の原因になった母親の浮気相手と同居してた沙織ちゃんの方が、私なんかよりずっと辛かったはずなのに、そんな事も気付かないなんて……


沙織ちゃんを疎ましく思っていた自分が恥ずかしくて堪らない。


「ごめんなさい。私……」

「いや、ちゃんと説明しなかった俺が悪かったんだ。許してくれ」

「うぅん、でも、私がママになるなんて言っちゃって良かったの?」


髪を撫でていた手がゆっくり顎の下に移動し、私の視線は持ち上げられた。


「梢恵は俺と結婚するんだ。もう一人のママだろ?」

「真司さん……」


そうだ。私は沙織ちゃんのもう一人のママになるんだ。いや、ならなきゃいけないんだ。愛しい人の娘だもの。同じ様に愛さないと……


「梢恵……愛してる」


くすぐったいくらい甘い声を発した唇が近付いてくる―――それに合わせ瞼を閉じた時、なんとなく人の気配を感じた。


「……パパ」

「さ、沙織……どうした?」


男の顔をしていた真司さんが、一瞬にして父親の顔に変わる。


「眠れない。一緒に寝て?」


バツが悪そうに私の顔を覗き込む真司さんに、私は笑顔で頷き「私の事はいいから……行ってあげて」と彼の背中を押した。


「そうか?すまないな」


リビングを出て行く二人の後ろ姿を見て、親子っていいな……なんて思ってしまう。すぐには無理でも、いつか私もあの二人の横を並んで歩きたい。もう一人のママとして……


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