『それは、大人の事情。』【完】
―――翌日、日曜日
結局、真司さんは朝まで私達の寝室には戻って来なかった。ずっと沙織ちゃんの横で添い寝していたらしい。
以前の私だったら、そんな真司さんにイラついていたかもしれない。でも、沙織ちゃんを真司さんと同じくらい愛そうと決めたからか、腹立たしさは全くなかった。
大人びたところはあるけど、やっぱりまだ子供。父親に甘えたいんだろうな……
久しぶりの晴天ってのもあり、気持ちは晴々。朝食を作って部屋の掃除を終えると、真司さんの洗濯物を干そうとベランダに出た。
「うーん、気持ちいい~」
爽やかな風に吹かれながら深呼吸した時、白石蓮の洗濯物の事を思い出し、息を吐くのと同時に「あぁっ!」と声を上げる。
返すの忘れてた。きっと今頃、洗濯物の中にパジャマがない事に気付いて不思議がってるだろうな。もしかしたら私が盗んだって思ってるかも。変な趣味があるとか勘違いされたらどうしよう……それより、あの子、熱下がったかな?
でも、彼の携帯番号を知らないから、それを確かめる術はない。
困ったなと思いながら洗濯物を干していたら、部屋の中から私を呼ぶ声が聞こえた。
真司さんは昨夜の事を私に詫びると、今、専務から電話があったと渋い顔をする。
「俺が沙織を引き取る事になったのが気に入らないみたいでね。ちゃんと説明しろって怒鳴られたよ。今から沙織を連れて家に来いと言われた」
「行くの?」
「仕方ないだろ?事情を説明してくるよ」
それは、私にとっては好都合だった。真司さん達がいない間に白石蓮に洗濯物を返しに行ける。