『それは、大人の事情。』【完】
二時間くらいで戻ると言う真司さんに、私も今から自分のマンションに忘れ物を取りに行ってくると嘘を付いた。
「真司さん達が戻るまでには帰ってるから」
「そうか、なら、専務の家を出る時に電話するよ。梢恵のマンションに寄るから一緒に帰ろう」
「でも、遠回りになるよ?」
「天気もいいしな。ドライブするのも悪くない。じゃあ、行ってくる」
二人を笑顔で見送り、私も慌てて部屋を出た。
ここから私のマンションまで三十分くらいだ。白石蓮に洗濯物を返しに行っても、真司さんが迎えに来るまで十分余裕がある。
でも、風邪を引いた白石蓮に同情した私がバカだった。お陰でこんなややこしい事になっちゃって……余計な事しなきゃ良かった。
反省しながら冷房の効いた電車を降りると、外はまるで初夏の日差し。日焼けを気にしつつマンションに向かう。途中、あのカフェの前で足を止め白石蓮の姿を探したたが見当たらない。
まだ風邪で休んでいるんだ。アパートに持って行けばいいな。
ようやく自分の部屋に到着し、クローゼットからあの紙袋を取り出した時、バックの中でスマホが鳴った。
それは佑月からの電話で、修と予定通り結婚式を挙げる事にしたという報告だった。色々あったけど、何度も話し合い決めたのだと佑月の声は明るかった。
「そう、佑月がそれでいいなら……」
『うん、でね、結婚式だけど……梢恵、出席してくれる?』
どうやら佑月は、私と修の過去を気にして、私が結婚式に出席したくないと思ってるんじゃないかと心配してた様だ。