『それは、大人の事情。』【完】
「何言ってんの?親友の結婚式じゃない。もちろん出席するよ」
『そう、良かった……じゃあ、明日、会社に招待状もってくから』
「うん、分かった」
気分良く電話を切ったが、気付けば佑月と三十分以上話していた。予想外の時間ロスに焦り立ち上がると、玄関のチャイムが鳴り、聞き覚えのある声がドアの向こうから聞こえてきた。
「梢恵さーん!おはよ~」
この声は……まさか?
開けたドアの先に居たのは、笑顔の白石蓮。
「どうしたの?」
「もぉ~どうしたのはないでしょ?梢恵さん、俺のパジャマ根こそぎ持ってたよね?風邪が良くなって天気いいから洗濯しようと思ったらパジャマが消えてたからビックリしたよ。
梢恵さんが来るまで脱衣所にあったから、犯人は梢恵さんしかいない!って思って取り返しに来た」
「な、確かにパジャマを持ち出したのは私だけど、犯人扱いなんて失礼しちゃう。君が熱出して洗濯出来ないって言うから、わざわざ洗ってあげようと思って持って来たのに……」
早口で捲し立てる私を白石蓮は上目遣いで見つめクスリと笑う。
「そんなの分かってるって。梢恵さんって、優しい人なんだね」
「ちょっと、誤解しないでよ。別に君に特別な感情なんてないんだから!」
ワザと冷たくそう言うと、部屋から洗濯物が入った紙袋を持ってきて彼に差し出した。
「チェッ!俺の事好きになってくれたんだと思って喜んだのに……残念」