『それは、大人の事情。』【完】

拗ねて唇を尖らせてる白石蓮に呆れた笑顔を向け、突き放す様な事を言ってるけど、正直、それが私の本心なのか……よく分からなくなっていた。


なんだろう……?この子と話してると、凄く楽だ。素の自分でいられる。


でも、そう感じる事が真司さんに対する裏切りなのではと後ろめたさも感じていた。


「ごめん、もうそろそろ出なきゃいけないの」

「あ、そうなんだ……じゃあ、また遊びに来るね。パジャマ洗濯してくれて有難う」


素直に帰って行く白石蓮の背中を見つめ、どうして真司さんのマンションで同棲を始めた事を彼に言わなかったんだろうと考えていた。


白石蓮に知られたくなかったから?うぅん、違う。別に彼に報告しなきゃいけない義務なんてないし、言う必要もないと思ったから。決して彼に知られたくないと思ったんじゃない。


そんな言い訳を並べ納得しようとしてる自分に苛立ち、玄関のドアを力任せに閉めた時、真司さんから電話が掛かってきた。


専務との話し合いもう終わったの?思ったより早かったな……


『待たせて悪かった。もう出れるか?』

「うん、で、専務は納得してくれたの?」

『あぁ、詳しい話しは後で……それより、もう梢恵のマンションの下まで来てるんだ。下りて来てくれ』

「えっ……?」


どうして?専務の家を出る時に電話するって言ってたのに……


驚いた私は慌てて玄関を飛び出し、鉄柵から身を乗り出してマンションの下を覗き込む。


私が焦った理由。それは―――白石蓮……


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